残業代支払い請求の手段

まずは内容証明郵便で請求

内容証明郵便とは文書の内容と発送日を郵便局長が証明してくれるものです。通常は配達日の証明を受けるために配達証明付にします。
内容証明郵便は、5年間、郵便局で原本を保管してくれます。そして証明が必要となった場合には、郵便局で文書の謄本を取り寄せることができます。

 

未払い残業代を請求するときに、内容証明郵便を使用する理由は、第一に時効の進行を一時的に中断させるためです。時効は、支払いを請求すると(催告)すると、催告の意思が相手に届いてから、その進行が6ヶ月中断ます。
賃金支払い請求は何年前の分まで遡っても構いません。ただし、会社が時効を主張(援用)すると2年を超える部分の労働者の賃金支払い請求権は、時効消滅してしまいます。未払い残業代の請求は、在職中に行うことは稀で、多くの場合は会社を辞めた後に行うでしょう。退職後に、会社に対して残業代の支払いを請求する場合、未払い残業代が発生している期間が2年を超えていることも少なくありません。こういった場合には、まず、会社に対して残業代の支払いを請求する文書を送付して、ひとまず時効の進行を中断させておく必要があります。残業代の支払いを請求することによって中断する時効の期間は6ヶ月間です。この6ヶ月間に会社から残業代が支払われれば、それで未払い残業代の問題は解決しますが、もし会社が残業代の支払いに応じないときは、6ヶ月を経過する前に、あっせんを申立てるか、裁判所に対して訴訟を提起するあるいは労働審判手続きを申立てるなどの方法により、時効の進行を中断させる必要があります。あっせん手続き中及びあっせん終了後1ヶ月以内は、時効が中断します。訴訟又は労働審判手続期間中も時効が中断します。

 

内容証明郵便を利用する第二の理由は、会社に対してプレッシャーをかけるためです。内容証明郵便の文書を厳格に作成しておくと、法律文書としての重みが出てきます。そうすることで、会社に、早期に残業代の支払いに応じてもらう効果が期待できます。
したがって、内容証明郵便文書は、記述のしかたが大切になってきます。例えば、弁護士や特定社労士が作成に関わった内容証明郵便文書は、会社に対してそれなりにプレッシャーを感じさせる文書となり、会社に、早期に残業代の支払いに応じる誘因となります。
しかし、逆に、内容証明郵便文書の作成に慣れていない素人が作成した文書は、専門家が読むと一目瞭然です。このような場合は、残業代支払いの交渉を引き延ばされた挙句に、本来支払われなければならない残業代の額を下回る額で和解してしまうような結果につながることもあります。
内容証明郵便文書をどのように記述すべきかわからないときは、無理せず、専門家に相談する方が賢明でしょう。

 

当事務所では、まず、残業手当等計算表の作成から始めて、正確な残業代を計算した後、効果的な内容証明郵便文書作案を作成するなどのサポートを行っています。

 

 

 

労働基準監督署への申告

未払い残業代の支払いを会社に請求したにも拘らず、会社が支払いに応じない場合には、労働基準監督署に会社の労働基準法違反(賃金不払い等)を申告をして、監督署の調査指導により、会社に支払いを促すという方法があります。但し、予め断っておくと、監督署の申告によって、未払い残業代を絶対確保できるということにはなりません。労働基準監督署ができることは、調査によって未払い残業代が確認できた場合に、その支払いを指導できるに止まるものです。支払い強制することはできません。ですから悪質な会社は、色々と理由を付けて労働基準監督署の指導に応じないこともよくあることです。ですから労働基準監督署の申告は会社に未払い残業代を支払わせる確実な方法ではないという事を念頭においておくべきです。

 

労働基準監督署に申告を行う場合には、手元にある証拠資料(給与明細書、タイムカードや出勤簿、出退勤記録をメモした手帳等)を全てコピーして持参してください。こういった資料等があると応対する労働基準監督官も調査しやすくなります。また、会社には一度文書で請求しているということを証明するために、内容証明郵便文書の本人保管分の原本のコピーも必ず持参してください。会社に何も請求していない段階で、監督署に申告しようとしても、監督官から「まず会社に請求してみてください」と言われるはずです。ですから既に請求済みでかつどういった請求をしているのかを監督官に確認してもらうためにも、内容証明郵便の原本の写しを持参すべきでしょう。

 

申告は労働基準監督署で、口頭で行うことができます。但し、できれば申告書を作成して、証拠資料等とクリップなどでひとまとめにして持参し、監督官に手渡しすると、監督官もスムーズに受理してくれるでしょう。時々、労働基準監督署の窓口で監督官に対して資料も持たずにただ口頭で申告しようとしている人を見かけますが、これだと監督官も客観的に事実を評価しようがありません。監督官が会社を調査しやすいように、申告の段階であなたも最大限の協力をしてあげるべきです。

 

当事務所では、申告書の作成、労働基準監督署への申告同行などのサポートを行っています。

 

裁判外のあっせん申請(申立て)

裁判外のあっせんは、私人間の紛争をあっせん員が紛争の当事者双方を取り持つ形で早期に解決を図る制度です。

 

会社と労働者個人との間の民事上のトラブル(これを「個別労働関係民事紛争」と言います。)に専門に扱うあっせん制度としては、大きく@労働局のあっせん、A地方労働委員会のあっせん、B社会保険労務士会労働紛争解決センターのあっせん、以上があります。をあっせん委員の調整の下に双方の合意によって解決を図る制度です。

 

残業代支払い請求も会社と労働者との間の民事上の紛争ですからあっせん申請の対象となる事件です。
但し、労働局では、残業代支払い請求などの、労働基準法で最低基準が定められている法律に抵触する恐れのある民事紛争については、あっせん申請を受理していません。
したがって、残業代支払い請求に係るあっせん申請は、地方労働委員会のあっせんか社会保険労務士会労働紛争解決センター対して行うことになります。

 

あっせんは裁判外の、紛争の当事者が、あっせん員がその間を取り持つことにより、和解により紛争の解決を図る制度です。したがって、紛争の当事者があっせんに参加するか否か、またあっせんに参加した場合でも、あっせんで和解するかどうかは、紛争の当事者の自由な意思によります。紛争の当事者の一方があっせんに参加しない場合や、あっせん期日であっせん員により当事者間で合意に至らない場合は、あっせん不調によりあっせん打切りとなります。

 

あっせん申請は、あっせん申請書(あっせん手続申立書)に必要事項を記載してこれを提出することにより開始します。
特に証拠等の提出は求められません。もっとも、残業代の支払いを求めるものですから、未払いの残業代を計算した表(残業手当等計算表など)や、その根拠となる証拠で、あっせん段階で提出しても構わないものは提出しておくべきです。ただし、あっせんが打切られた後に裁判所へ労働審判手続きを申立てるか訴訟を提起する予定である場合は、事前にあっせん機関に対してその旨を伝えて、会社には証拠を開示しないように要望しておく必要があります。

 

当事務所は、特定社会保険労務士(あっせん手続において紛争当事者の代理人となることができる国家資格です。)として、万が一あっせんが打切られた場合に備えて、裁判所の労働審判手続申立書に準じた「あっせん手続申立書」の作成、残業手当等計算表の作成、証拠(甲号証)の作成、あっせん手続期間中に代理人として会社との交渉、あっせん期日での陳述等のトータルサポートを行っています。

 

裁判所に労働審判手続きを申立てる

労働審判手続とは、裁判所において、審判官(職業裁判官)と審判員(民間人で労使トラブルに精通した者)からなる労働審判委員会が、個別労働関係民事紛争を、証拠等に基づいて事実関係を審理して、法律上認められる当事者の権利義務関係を踏まえつつ、紛争の当事者双方の互譲に期待しつつ調停を試みて、調停で解決に至らないときに、審判により、早期に解決を図る制度です。

 

個別労働関係民事紛争の解決は、今日、訴訟よりも労働審判で解決を図る方が主流となりつつあります。これは、訴訟に比べて比較的短期間に解決を図れること、審判官(裁判官)の他に労働問題に精通した労働者団体、経営者団体の推薦を受けた民間人2名が参加することによって、より現実的な解決が図れること、申立費用が訴訟に比べて安いことなどが主な理由ではないかと考えられます。

 

労働審判手続きは、原則期日3回以内で、証拠調べが行われ、ある程度の事実関係を整理した上で、調停が試みられ、調停が成立しない場合には審判が下されます。もっとも現実には、審判官は強力に調停成立を当事者双方に迫ってきます。調停は当事者双方の互譲によって成立します。ですから労働審判を申立てる場合には、当初の主張にある程度妥協できる余地を持たせておくべきでしょう。

 

労働審判を申立てる場合にネックとなるのは、労働審判手続申立書の作成ではないでしょうか。労働審判手続申立書は、申立の趣旨、申立の理由、予想される争点及び争点に関する重要な事実、申立に至る経緯、などを整然と記述しなければなりません。勿論、証拠もしっかりと準備しておかなければなりません。ですからそういったことに自信がない場合には、弁護士に代理してもらうとか、労働審判期日は本人で対応するとしても、申立書の作成については、特定社会保険労務士等に法的な点についての助言を仰ぐなどの対策を立てておくべきでしょう。労働審判は、期日では口頭でのやり取りが原則となります。相手方の答弁書に対して、補充書面を提出して抗弁等すべき場合がないともいえませんが、基本的には期日に口頭で対応できると思います。
労働審判も訴訟と同様、十分な証拠を準備して、可能な限り第1回審判期日までに出し切っておく必要があります。場合によっては第2回期日までに追加的に証拠を提出することになるかもしれませんが、それは間接事実の立証ということで補充的に提出するものになるでしょう。

 

付加金の請求については、各都道府県の地方裁判所ごとに、申立の趣旨に付加金の請求を加えることを、認めているところと認めていないところとがあるようです。但し申立の趣旨で付加金の請求を認めている裁判所でも、労働審判の性質上(労働審判の効力は裁判上の和解と同一の効力)、労働審判では、付加金という名目で支払いを命じることはありません。ですから、労働審判の申立段階での付加金請求は、労働審判が失効して、万が一訴訟に移行した場合に、付加金請求の2年の除斥期間対策として、念のために行っておく程度に過ぎないということを念頭においておかなければなりません。

 

当事務所は、裁判外のあっせんを申立てる段階で、労働審判手続申立書に準じたあっせん手続申立書を作成しています。あっせんを利用すること前提に、万が一あっせんが打切られたときに、依頼者が本人申立てという形で裁判所に労働審判手続きを申立てる場合に、その依頼者のサポートを行います。

 

裁判所に訴訟を提起する

訴訟とは、私人間の生活関係に関する紛争につき、民法などの私法を適用して解決するための手続です。

 

訴訟は、未払い賃金の請求額に応じて、請求額が60万円以下であれば簡易裁判所の少額訴訟、140万円以下であれば簡易裁判所の訴訟、140万円を超える場合に地方裁判所の訴訟、というようにいくつかの提訴先があります。少額訴訟の場合には簡易裁判所に定型の訴状が準備されていますから、証拠と未払い賃金計算書をしっかり用意しておけば、提訴はそう難しくはありません。

 

通常訴訟は、訴状の作成という難関があります。また提訴後、被告である会社から送られてくる答弁書に反論がある場合には準備書面を作成して提出しなければなりません。口頭弁論は凡そ一月に一回くらいの割合で開かれます。地方裁判所の訴訟の場合、判決までに要する期間は約1年です。尤も多くの場合は、途中で和解が試みられ裁判上の和解が成立しています。
訴額が140万円を超える場合、地方裁判所に訴訟を提起することになります。

 

訴訟の行方を左右するのは、なんと言っても証拠力です。予想される争点を整理して、十分な証拠を準備しておかなければなりません。

 

労働者が、労働基準法第114条に基づいて、残業代に加えて付加金の支払いも希望するときは、裁判所に対して訴訟を起こして、判決をしてもらわなければなりません。

 

訴訟は、一人で裁判所に提起することもできます。もっとも、訴状やその後の準備書面の作成等が専門的であり、どういった証拠をどのタイミングで裁判所に提出するかなどの相手との駆引き的な側面もありますから、できれば、弁護士等の専門家に代理を依頼しておくと何かと便利です。

 

訴訟代理人となることができるのは、地方裁判所の通常訴訟であれば弁護士、簡易裁判所の訴訟又は少額訴訟であれば、弁護士に加えて認定司法書士となります。

 

当事務所は、特定社会保険労務士として、訴訟代理人になることは法律上できませんが、どういった訴状や準備書面を作成すべきか、証拠はどういったものが有益か、どういう風に訴訟を進めるか、ということについて相談を受ける形でサポートを行います。

 

 
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